今回は、保育士さんが行う保育相談支援が母親に与える精神的影響について調査した論文について取り上げる。
<自分なりにまとめてみた>
母親の育児感情と養育行動や育児への省察との関連や2008年に改定された保育所保育指針において、新たに「保護者に対する支援」の章が設けられたことを受け、保育所・幼稚園での保育相談支援が求められている。この論文では、保育相談支援と育児感情、和養育行動、育児の省察の関連について明らかにすることを目的とし、保育所や幼稚園を利用している保護者731名に質問紙調査を行った。その結果、「子育て負担感」や「子育て不安感」が高まることで、自分の子育てを否定的に捉えるなど、ネガティブな自己注目意識を高め、子どもの気持ちに寄り添う視点を弱めてしまう可能性があることがわかった。「子育て不安感」「子育て負担感」は子どもに対して感情的に叱るなどの行為と関連することが理解された。また、保育相談の利用しやすさは母親の対児感情に影響を及ぼしており、保育相談支援は、母親が自身の育児を振り返ることや他者の子育てを参照することにより高まる不安感や負担感(もしくは逆に、不安 感や負担感が高まることで、自身の育児を責める、人と比べてしまうといった思い)を軽減 する効果があるといえるかもしれない。
<感想>
幼児のお子さんがいる保護者が育児について相談したり、不安を語ったりできる身近な専門職の一つに保育士さんの存在があると思う。その保育士さんには、児童福祉法において、「保育相談支援」の基本的な考え方にも通じる「保育に関する保護者の指導」が業務であるという規定があるため、保護者に対し助言したり、相談に乗ったりすることが求められているらしい。この論文では、実際に保育相談支援を行うことで、母親自身の育児不安感や負担感を軽減する効果があると言える可能性があり、また、育児不安感や負担感が軽減されることで、感情的に叱るなどの行為を防ぐことができるかもしれないことが述べられている。保護者が子どもの送迎をする時にちょっとした相談時間を持てるなど、保育相談を利用しやすくなると良いと感じた。しかし、相談内容によっては保育士さんだけでは対処するのが難しい内容もあるだろう。そういった時に、私が目指している心理職やソーシャルワーカーなど複数の支援職も携わることができたなら、保護者にとっては相談がしやすく、保護者から相談を受けた保育士さんにとっては負担や抱え込みがしづらい環境となり、結果として、よりより育児環境へとつながっていくのではないだろか。保護者も支援者もどちらも疲れ切ることなく、携われるようになってほしい。
引用文献
中山 智哉・渡邉 望・春高 裕美・木山 徹哉(2013).母親の育児感情に影響を及ぼ す要因の探索的検討ー母親の育児方法・育児への省察および保育相談支援との関連ー 九州女子大学紀要 第50巻 2号, 15~29.
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